先日購入した全4巻の王道の狗ですが、一気に読み切ってしまいました。実際出版されてから何年もたっているので今更書くような物でもないのでしょうけど、私としては今回新たに出会った漫画なのでちょっと書きたいなと思います。
舞台は明治時代の北海道から始まり、脱走。アイヌに助けられ、アイヌとして生き、色々な人々との出会い、別れ等を得て東京、金玉均に仕え、貫という名前を新たに得て、・・・・・あらすじは良いとしよう。そう、一人の男が激動の明治時代をどの様に渡り歩き、動乱の世の中をどう生き抜くのかを描いていました。一気に読み終えたと言うくらい非常に面白い作品でした。この王道の狗は安彦良和氏も自信作な様ですが、それも解る気がします。正直絶賛しました。舞台背景にある明治時代中期からの歴史的な動きに安彦良和氏が新たにその中を生き抜く青年に命を吹き込んだように、非常に主人公は人間ぽい。この人はこんな漫画家だったんだと初めて知りました。
彼の書く女性は艶やかだ。確かにその瞬間にエロチシズムはあるのだけれどもそれが主役に出るような漫画ではもちろん無い。本当に男っぽい作品だと思う。キャラクターの濃さだけが異常に前に出る作品でないというのがすごい、ストーリーの濃さに負ける絵でもない。バランスが取れて居るんですよね。それに絵がペン描きじゃない、筆なんですよね。タッチが全体的に柔らかい。それにどうやらそんなにアシスタントを使わない作者らしいので背景も、ちょっとしたキャラクターも全部安彦氏の絵なのです。これは嬉しいですね。
政治的な書きにくい部分の漫画であるだけに非常に描き手の思想が反映されやすくなる内容なのだけれども、安彦氏のそれは不快感もなく、非常にすんなり入り込めた。私自身その明治時代の歴史を熟知しているか?と問われれば良くわからない。大きな日清戦争があっただとか、三国干渉がどうのこうの、日韓併合とか有名な物しか知らないし、それについても別に特別勉強したわけではないからどうのこうの言う知識はない。でも、何か安彦氏の描きたい物、語りたかった物。解った気もする。上手く感想も論評するような知識も持ち合わせていないのでちゃんとしたことは書けないのだけれども、一言というとしたら「すばらしい」と絶賛である。政治的歴史的内容の描画を絶賛したのではない。漫画として、一作品として大絶賛だ。ストーリー展開、主人公の人間性、キャラクター、周りを取り巻く人々。みんな激動の時代を生きているんだなと感じさせられる。兎にも角にも私はこの漫画に出会えて良かった。
次は虹色のトロツキーを読みたいな。ブックオフで集めたくなってきた。
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コメント
『王道の狗』 09/11/06〆
追記:dankogaiさんが(首をかしげてしまうものも多い、と手放しではないものの)安彦良和さんの歴史モノを高く評価しておられました! (cf.404 Blog Not Found:スサノオといえばオオクニヌシ
なんだか嬉しいな♪ 私のまわりにいる安彦さんをお好きだっていう方って大抵画のことばかりなんですよ。批評や書評もほとんどが画の魅力についてのものだしさ。たまに『ナムジ』のストーリーに触れていても、学説としてはトンデモって感じの的外れなものばかりだったし。
小飼弾さんは発行されている単行本はすべてお持ちなんだとか、だったら『イエス』や『王道の狗』もお読みになった上で、『ナ…
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バカヤマびとさん
すいませんTB届いています。TBスパム対策のため認証制になっていますので、私が確認して表示するようにして要るんです。お手数おかけしました。