硫黄島からの手紙 -感想-

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日本 硫黄島からの手紙
監督:クリントイーストウッド、制作:スティーブンスピルバーグ。
 見てきました。第2弾日本側から見た「硫黄島からの手紙」、第1弾の「父親たちの星条旗」についてはこちらの感想文でも読んでください。
硫黄島からの手紙 [Blu-ray] 父親たち〜を見終わったときと同じように、今回の硫黄島からの手紙も見終わった後非常にブルーになる映画でしたね。もちろん素晴らしいとも思う映画なのですが、クリントイーストウッドという監督はやはりお涙ちょうだいという作り方はしませんでした。正直最初のほうは「あれ?」「泣かす作り?」なんて思った部分もあったのですがやはりそうなると前作との雰囲気が変わってしまうのでイーストウッドらしく乾いた作りになっていました。そう、特に今回のこの硫黄島2作品、感動とかは必要ない映画です。

 サイパンを墜とされ本土防衛の最終ラインとなっている硫黄島を死守していくという話なのだが、その戦いは既に帝国艦隊を失い、戦闘機もほとんど無い日本軍には明らかに勝ち目のない戦闘。5日で墜とせると言われたこの硫黄島戦を約一ヶ月間も長引かせた日本軍の戦い、逃げることも許されずその当時の思想と現実と生死の分かれ道が誰にも先を読むことの出来ない時代で生きている人間の話でしたね。海岸沿いで米軍の上陸を防ぐような戦い方をするという海軍型の戦い方と渡辺謙が演じる指揮官が主張する洞窟を掘り要塞化して戦う戦闘方法、同じ日本軍でも既に全く統率が取れなくなってしまっている実態も負けゆく日本を上手く描いてくれた気もします。
 映画のタイトルとなっているように硫黄島からみんな手紙を書いている。この演出は私自身は結構好きですね、今回の映画は個人個人の裏事情と言いますかバックグラウンドにある生活の風景を少しだけ描いていました、この人物背景の部分が多すぎるとはっきり言って日本の作る戦争映画やドラマになってしまいます。お涙ちょうだいって奴ですよね、泣いて叫んで・・・って言う作りです。その部分を最小限であり、最適な方法で少しだけ挿入した今回の演出は日本人が見ても嫌な気分にさせないような配慮した部分なのか、もしくは日本人好みに着色してくれた部分なのかな?個人的にはそうであってもなくても、今回のこの挿入方法は良かったです。量も適量。その反面手紙を音読しているという演出方法で少ししか映像として描かれていない裏側の部分を補完してくれているので解りやすさも加わり私は良かったなって思う点ですね。

 前作同様リアルな戦争描写、日本兵もアメリカ兵も戦争により亡くなっていきます。日本兵の自決をするシーンでは手榴弾抱きかかえての自爆、内蔵も何もかも吹き出て見るも無惨な死に様。捉えた米軍を日本軍が虐殺するシーンもあれば、逆に捕虜にして治療をし会話をし、敵国米兵の母親からの手紙を見つけそれを読んでいく、敵であるアメリカ兵も自分たちと同じように母親が居る。何も変わらない一人の人間同士であることを一生懸命訴えてくれた。
 鬼畜米英と無理矢理教え込まれた思想、でもそれが真実じゃないって言うのはきっとほとんどの人が理解していたはずなのに、長い間教え込まれるとそれも解らなくなっていってしまったのかなと心が痛む。
 もちろん日本兵がアメリカ軍に捕虜にされたのに同じように「めんどくさい」的な理由から射殺されるシーンは少しショックでしたね。もちろん最後まで生き抜き米軍に投降or掴まりちゃんと治療された日本兵も描かれていました。そう、今回のこの硫黄島からの手紙での作り方、非常に良かったと思う。確かにいつも言っているけれどもその時代に生きても居ないしその現場を自分の目で見たわけではないから何が真実かなんて言うのは判断できはしないけれども、今回の作りはやるせなさを感じる一方、戦争というのはどっちが悪いどっちが正義なんて無いという事実をまざまざと見せつけてくれました。日本人もアメリカ人も捕虜を虐殺、その反面治療をし助ける人たちもいる。結局は人間個人個人が「国」という大きな組織の中に組み込まれ、その流れの中で人を殺す。良くあるアメリカの映画でアメリカ万歳星条旗最高!って言うのはさすがに全くなかった、良くも悪くもどっちも正義であり、悪であったと言うのを非常に上手く中立的に描いてくれたと思う。
 同じ日本兵に殺される日本兵、前作でははしゃいで海に落ちたアメリカ兵を助けない米軍。結局国と国の争いの中にある人間個人一人というのは駒でしか過ぎないわけです。
 この2作品、共に戦争シーンはかなりリアル。惨い、全体的にカラーの彩度を抑えた色合いなので血の色が強調されないって言うのが救いなのですが、前回も書いたようにお子様には見せないで良いと思う。中学生以上が良いかな?とはやっぱり思いますね。
 アメリカが描く日本映画は必ず何処かおかしかったのだが、そのへんは上手くクリアされていたように思える。ただ日本人特有の散りゆく美学的な部分の説明は皆無。もちろんそこを描く必要なんかはない。先ほども書いたが散りゆくことが綺麗か?美しいか?そんなわけがない、捕虜になるくらいなら、辱めを受けるなら、死んだ方がマシ。手榴弾で自決。美しく描かれるはずがない。アメリカ人には理解不能だし、今回の作りもこれで良いと思った。これが現実だしあえて汚らしく、惨たらしく、悲惨に描いてくれたのはアメリカ人が作ったから出来たことだと思う。中村獅童演じる士官兵が一人爆弾を体に巻いて逃げる事への抵抗をし突き進んでいくが、結局散ることも出来ず、最後には米軍に掴まってしまうと言うそこの部分もなにか同じように感じました。
 今回の感想はやっぱり上手くかけない、書いてることは前作の感想とダブル部分が結構ある。やっぱり思ったのは「硫黄島」という舞台を映画にしてくれたことは非常に価値があると思う、日本で描かれる戦争物はどうもだいたい流れが決まってしまっているし作られる作品もほとんど同じ舞台が多い。たとえば広島長崎の原爆、沖縄玉砕、東京大空襲、戦艦大和。しかも戦争を美化って言う言い方は言い過ぎなのかもしれないが、散りゆく生き様と戦争の悲惨さって言うのを前面に出しすぎ泣かせる作りがほとんどに思える。別にそれがいけないわけではない、私自身もそれを見て涙する訳だから、昨年公開された「男たちのYAMATO」も泣かせる映画だったが、あれはあれで俺は好きだし、日本が作る泣かせる戦争映画にももちろん価値はあると思うし必要だ。でも、だからこそ今回のイーストウッドが作ったこの父親たちの星条旗〜硫黄島からの手紙という作品に大いに意味があると思った。本当ならこの第2弾「硫黄島からの手紙」的な作品を日本人が作れるようにならなければいけないんじゃないのかな?美しい国日本なんて今の首相は言っているのだけれども、美しい国って?変にタブーになっている部分をもっと日本人が描かなければ本当に日本人は戦争を忘れてしまうのではないだろうか。戦後に産まれ全く戦争という者を知ら無い自分も含め、少し考えてみるのも良いかと思う。先日テレビを見ていたら女子高生が良いことを言っていた。「日本がもし戦争するとしたらどの様なときか?」と言うような問いに女子高生はこう答えた「日本人が戦争を本当に忘れてしまったときに戦争は起こると思う。」と答えたのだ、少しビックリしたというか、的確に今の時代を捉えていたので胸にすこし「チクッ」とする者を覚えたのです。
 だからこそ今回のこの映画、日本人が日本人側の視点だけで作る戦争という枠組みを超えてくれた。敵であったアメリカが作ってくれたわけだ。戦争に正義も悪もない、ともに正義であり悪でもある。中立に作られたと思うこの作品は本当に素晴らしいと言えば言い過ぎになるのかもしれないけれど、ひとつの戦争映画として形を作ってくれたと思う。たとえば北朝鮮や韓国、中国の作る日本植民地支配から脱却した過程を作った映画も、ヨーロッパ各国の戦争映画も、勝ち取った!とかそのようなニュアンスではなく、戦争は惨いという中立的な見方の物がもう少し作られ始めたら良いかなって感じますね。まぁそれは日本も同じだとは思いますけれども・・・・。
 今回のこの映画、2作品ともですが本当に見て良かったと思います。興行成績や制作費なんてどうでも良いし、CGがすごい!とか演出がどうのこうの、アカデミー賞最有力?って言うのも正直どうでも良い。人に勧めたい理由は絶対見たら何かを感じられると思うからです。そりゃ、爆発されても何にも吹っ飛ばずかすり傷だけで死ぬ日本の戦争物ばかり見ているわけですからこんだけリアルに人が死ぬ描写を見たら不快感は凄まじいですが、物事を中立的に見て正義も悪も無いって言う現状を感じられたらそれで良いと思います。もちろん見終わった後に爽快感なんか皆無、でもその中にも第一作の最後にあった海水浴シーンや、今回の第2作にあるような激戦を最後まで生き抜いた一兵士を見たとき、それは少し救われた気持ちに私はなりました。ただ、目を背けずちゃんと見た方が良いと思いますね。
映画への評価
4.5点/5点満点
 クリントイーストウッドらしい何が言いたいか解らない映画だったって言う様に感じる方ももしかしたらいらっしゃるかもしれないけれども、それでも見てみたらいいかな?この2作品のメッセージは本当に強い物を感じました。戦争で英雄など生まれない。戦争からは何も生まれない。本当にその通りだ、何も格好良くはない。戦争に勝てば正義、勝てば官軍、負ければ賊軍。それは決まっている事実なのかもしれないけれどそれは大きな国家の中でしか通用しない。映画一作品で世界が平和になるとはとうてい思えないですけどね。
「硫黄島からの手紙」の映画詳細、映画館情報はこちら >>

硫黄島

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